四間飛車は、飛車を4筋目(先手から見て6筋、後手なら4筋)に振り、玉を反対側の美濃囲いで固めて戦う振り飛車です。自分から無理に攻めず、相手が攻めてきたところで駒を交換して「捌く」(自分の飛車や角が自由に動ける形にする)のが基本の考え方です。
先に結論を書くと、覚えることは次の 3 つです。
- ☗6六歩で角道(角が斜めに通る道)を止め、☗6八飛・☗7七角と組む。 角交換の乱戦を避け、7七の角で8筋の攻めを受けるため
- 玉は ☗4八玉・☗3八玉・☗2八玉と運び、☗3八銀・☗5八金左で美濃囲いにする。 飛車から玉を遠ざけ、横からの攻めに強い形にする
- 攻められた筋に飛車を回し、☗6五歩で角道を開けて捌く。 ☖7五歩と7筋を攻められたら、歩を取らずに ☗7八飛
この記事では先手の四間飛車を例に、美濃囲いまでの組み方と、相手が攻めてきたときの基本の捌き方を、5 枚の局面図と、1 手ずつ並べられる盤で見ていきます。急戦(囲いが完成する前に攻めてくる指し方)・持久戦(お互いに玉を固めてから戦う指し方)それぞれの細かい変化は扱いません。
四間飛車とは:角道を止めて「待って捌く」振り飛車
四間飛車は、飛車を4筋目に振る振り飛車です。先手なら ☗6八飛、後手なら ☖4二飛と振ります。同じ振り飛車でも、3筋目に振るのが三間飛車(早石田もその1 つ)、5筋目(中央)が中飛車、2筋目が向かい飛車です。
四間飛車には大きく分けて 2 つの指し方があります。
| 指し方 | 角道 | 特徴 |
|---|---|---|
| ノーマル四間飛車 | ☗6六歩で止める | 美濃囲いに組んで、相手の攻めを待って捌く。この記事で扱う形 |
| 角交換四間飛車 | 止めない | 早めに角を交換して、持ち駒の角を生かして戦う |
四間飛車は江戸時代の棋譜にも見られる古い戦法で、昭和には大山康晴十五世名人が美濃囲いと組み合わせて得意にしました。1970 年代の後半に居飛車穴熊が広まると、角道を止める振り飛車は苦しい戦いが増えます。これに対抗したのが藤井猛(現九段)の「藤井システム」です。1995 年に順位戦で初登場し、藤井はこの戦法で升田幸三賞を受け、1998 年には竜王を獲得しました。のちに角交換四間飛車でも、2 度目の升田幸三賞を受けています。
今のプロの公式戦では、角道を止める四間飛車の採用は減っています。遠山雄亮六段は2023 年の記事で、勝率は大きく劣っていないのに敬遠されている、と紹介しています。手元のソフト(やねうら王)で基本図(後述の第1図)を調べると、後手の +190 前後で、互角に近い形勢でした。組み方が分かりやすく、玉が固いまま戦えるので、アマチュアの間では今も人気の高い戦法です。
第1図(基本図)までの手順
☗7六歩 ☖3四歩 ☗6六歩 ☖8四歩 ☗6八飛 ☖8五歩 ☗7七角 ☖6二銀 ☗7八銀 ☖4二玉 ☗4八玉 ☖3二玉 ☗3八玉 ☖5二金右 ☗2八玉 ☖7四歩 ☗3八銀 ☖1四歩 ☗5八金左 ☖5四歩 ☗6七銀(第1図)

第1図までの手には、それぞれ理由があります。
- 3 手目の ☗6六歩で角道を止める。 角交換になると、お互いに角を打ち込む隙が多い乱戦になりやすい。角道を止めれば、落ち着いて玉を囲える
- ☖8五歩には ☗7七角。 7七の角が8六に利いている(動ける)ので、後手は ☖8六歩 ☗同歩 ☖同飛と飛車先の歩を交換できない(☗同角で飛車が取れる)
- 玉を先に2八まで運び、☗3八銀・☗5八金左はそのあと。 玉は3八を通るので、銀を先に上がると通れなくなる。玉を飛車から遠ざけて(「玉飛接近すべからず」)、金銀 3 枚で囲う
- 最後の ☗6七銀で、7八を空ける。 7八に飛車が回れるようになり、6筋も支えられる。7七の角の頭(すぐ前の7六)も守っている
美濃囲いは、このあと ☗4六歩・☗4七金と金を上げれば高美濃、さらに銀を2七・金を3八に上がれば銀冠と、もっと固い形に組み替えられます。
この記事の手順は、下の盤で並べられます。☗7七角を省く失敗、後手の ☖8六歩と持久戦の形、☗同歩と取る失敗、☗7五銀と出る失敗、☗6五歩を ☖同銀と取る変化も入れてあるので、分かれ道で手を切り替えて、形勢の違いを見比べてください。
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四間飛車の正しい指し方:攻められた筋に飛車を回して捌く
☖7五歩と攻められたら ☗7八飛
後手が銀を6四に出て7筋の歩をぶつけてくるのは、四間飛車がよく受ける急戦の 1 つです。
第1図から ☖5三銀 ☗1六歩 ☖6四銀 ☗4六歩 ☖7五歩(第2図)
☗1六歩は端の歩を突いて玉の逃げ道を広げる手、☗4六歩は高美濃に組み替える準備の手です。

☖7五歩は、☗同歩なら ☖同銀と銀を前に出し、7七の角の頭を攻める手です。ここは歩を取らずに ☗7八飛 と、攻められた7筋に飛車を回します。
これが四間飛車のいちばん大事な考え方です。飛車は最初から6筋にいますが、そこにこだわらず、相手が攻めてきた筋に移って受けます。7筋に飛車がいれば、7筋で駒の交換が起きたときに飛車がそのまま働きます。☗7八飛のあとは、ソフトでもほぼ互角です。
飛車を回したら ☗6五歩で角道を開ける
☗7八飛のあと、後手は ☖7六歩 ☗同銀 ☖7二飛と、7筋の歩を交換して飛車を7筋に回してきます。ここで ☗6五歩と突くのが捌きの手です。
第2図から ☗7八飛 ☖7六歩 ☗同銀 ☖7二飛 ☗6五歩(第3図)

☗6五歩には 2 つのねらいがあります。
- 6四の銀に当てる。 ☖同銀と歩を取ると、7六の銀で ☗同銀と取り返して銀の交換になり、先手がはっきりよくなる(ソフトで先手の +1300 前後)。後手は銀を逃がす手が要る
- 止めていた角道を開ける。 6六の歩がいなくなったので、7七の角が2二の後手の角とにらみ合う
後手は ☖7七角成と角を交換し、☗同飛のあとに ☖5五銀と銀を前にかわすのが有力です。こうなると先手の飛車は7筋で働き、持ち駒の角も攻めに使えます。ここまで進んで、ほぼ互角です。
最初に止めた角道を、戦いが始まったところで自分から開ける。「待って捌く」とは、この流れのことです。
よくある失敗:☖7五歩を ☗同歩と取り、☗7六歩と打つ
いちばん多い失敗は、第2図の ☖7五歩を、つい ☗同歩と取ってしまうことです。☗同歩 ☖同銀と銀に出てこられた時点で、後手の +400 前後と差がつきます。そこからさらに ☗7六歩と打って銀を追い返そうとすると、受けが難しくなります。
第2図から ☗同歩 ☖同銀 ☗7六歩 ☖8六歩(第4図)

☖8六歩に ☗同歩なら ☖同銀で、銀が7七の角と8七を同時にねらいます。☗同角と歩を取っても ☖同銀で角を取られ、放っておけば ☖8七歩成で角の頭が破られます。7七の角は、6六の歩と6八の飛車に囲まれて逃げ場が少ないのです。ソフトでは後手の +1200 前後で、後手が勝ちやすい局面です。
☖7五歩は、取らせて銀を前に出すための歩です。四間飛車の角は頭が弱いので、角の頭(7六)とその隣の8六をねらう手には特に気をつけましょう。☗同歩と取ってしまったら、☗7六歩とは打たずに ☗7八飛と回るのがまだましです。
ほかにも、次のような失敗があります。
| 失敗の手 | どうなるか |
|---|---|
| 7 手目に ☗7七角を上がらず ☗4八玉 | ☖8六歩 ☗同歩 ☖同飛で飛車先の歩を交換される。続けて ☗3八玉と囲いを急ぐと、☖8七飛成で龍(成った飛車)を作られる(後手の +400 前後) |
| ☖7二飛(第3図の 1 手前)に ☗7五銀 | 銀で後手の銀を押し返そうと前に出ても、7五の銀を守る駒がいない。☖同銀でただで取られる |
その後の展開:後手の攻め方ごとの応じ方
第1図から、後手の主な指し方と先手の応じ方をまとめます。
| 後手の手 | 先手の手 | ひとこと |
|---|---|---|
| ☖5三銀・☖6四銀から ☖7五歩 | ☗7八飛、続けて ☗6五歩 | この記事の本筋。ほぼ互角 |
| ☖8六歩 ☗同歩 ☖同飛 | ☗同角 | 7七の角が8六に利いていて、飛車が取れる。先手が勝ち |
| ☖4四歩・☖3三角・☖2二玉(角道を止めて玉を固める) | ☗6五歩・☗6六銀 | 6筋の位を取って駒組みを続ける(第5図) |
後手が急がずに玉を固めてくるときは、先手も慌てて攻めません。後手が ☖4四歩と角道を止めていれば、☗6五歩と突いても角交換にはならないので、6筋の歩を5段目まで伸ばして陣地を広げ(「位を取る」)、☗6六銀と銀を活用します。
第1図から ☖4四歩 ☗1六歩 ☖3三角 ☗4六歩 ☖2二玉 ☗6五歩 ☖5三銀 ☗6六銀(第5図)

ここで間違えやすいのは、「☗6五歩は角交換の合図」と覚えてしまうことです。第3図のように後手の角道が通っていれば ☗6五歩は角交換を誘う手になり、第5図のように止まっていれば位を取る手になります。☗6五歩を突く前に、後手の角道が通っているかを確かめましょう。第5図はソフトで後手の +150 前後。互角に近い駒組みの勝負です。
このほか、棒銀や早仕掛けといった急戦、居飛車穴熊などの持久戦にも、それぞれ定跡があります。どれも「攻められた筋に飛車を回す」「角道を開けて捌く」という考え方は同じなので、まずはこの記事の形で身につけておきましょう。
覚え方と練習
四間飛車は、手順を丸ごと暗記するより、「この形になったらこう」という要所を覚えるほうが身につきます。
- 第1図まで並べる。 21 手目の ☗6七銀までを、何も見ずに並べられるようにする。順番は多少入れ替えても組めるが、☗6六歩と ☗7七角だけは早めに
- 後手の攻め方ごとの次の一手を覚える。 ☖7五歩なら ☗7八飛、☖7二飛なら ☗6五歩、☖8六歩なら ☗同歩 ☖同飛 ☗同角
- 実戦で知らない攻め方をされたら、その局面を書き足す。 終局後に本やソフトで調べ、分かれ道を 1 つずつ増やしていく。見返すときは、負けた将棋の振り返り方の手順も役に立ちます
書き足した分かれ道は、その局面を見て次の一手を答える形で繰り返すと忘れにくくなります。
実戦で四間飛車になったら、終わったあとに棋譜を見返して、どの分かれ道で外れたかを確かめます。棋譜蔵は Web で登録するだけで使えて、保存した自分の棋譜ファイルをパソコンでもスマホでもいつでも開けます。対局の棋譜を貼り付ければそのまま形勢を解析できるので、どこで形勢を損ねたかを手軽に振り返れます。
よくある質問
四間飛車は弱い戦法ですか?
弱くはありません。プロの公式戦では採用が減りましたが、勝率もソフトの評価値も互角の範囲です。アマチュアの実戦では、玉の固さと分かりやすい方針が生きるので、今も十分に勝てる戦法です。
初心者におすすめですか?
おすすめです。組み方がほぼ決まっていて、「攻められた筋に飛車を回す」「角道を開けて捌く」という方針も分かりやすいからです。美濃囲いを知っておくと、居飛車で振り飛車と戦うときにも役立ちます。将棋を始めたばかりの人は、将棋の始め方もあわせてどうぞ。
後手番で四間飛車を指すには?
駒の配置を左右反対にすれば、同じ考え方で指せます。後手は ☖3四歩のあと ☖4四歩で角道を止め、☖4二飛と振ります。先手の ☗2五歩には ☖3三角と上がって2筋を受け(先手の ☗7七角にあたる手)、玉を ☖6二玉・☖7二玉・☖8二玉と運んで、☖7二銀・☖5二金左で美濃囲いにします。☖4三銀で角の頭を守り、攻められた筋(たとえば3筋なら ☖3二飛)に飛車を回して、☖4五歩で角道を開けて捌く流れも同じです。
居飛車穴熊にはどうすればいいですか?
穴熊に組まれる前に動く藤井システム、美濃囲いを高美濃・銀冠に組み替えてじっくり戦う形、自分も穴熊に組む四間飛車穴熊などがあります。どれも手順が長いので、まずはこの記事の基本の捌き方を身につけてから取り組むとよいでしょう。
まとめ
- 四間飛車は、☗6六歩で角道を止め、☗6八飛・☗7七角 と組む振り飛車
- 玉は ☗4八玉・☗3八玉・☗2八玉 と運び、☗3八銀・☗5八金左で美濃囲いにする。☗6七銀で7八を空けておく
- ☖7五歩と攻められたら、取らずに ☗7八飛。攻められた筋に飛車を回す
- 戦いが始まったら ☗6五歩 で角道を開けて捌く。後手の角道が止まっていれば、☗6五歩は位を取る手になる
まずは上の盤で第1図まで並べ、次の対局で振り飛車を試すときは、☗6六歩と角道を止めて美濃囲いまで組んでみてください。