将棋に興味はあるけれど、何から手をつければいいのかわからない。駒の動きもうろ覚えで、いきなり人と指すのは気が引ける。この記事は、そんな方のための「最初の 1 か月」の道しるべです。道具を買わなくても、1 か月ほどで「人と 1 局指しきれる」ところを目指せます。

将棋の始め方は 5 ステップ

次の順番で進めると、迷わずに始められます。

  1. 駒の並べ方と動きを覚える(8 種類)
  2. 勝ち方と、最低限のルール・反則を知る
  3. 弱いコンピューターや駒落ちで「勝つ経験」をする
  4. 1 手詰めの問題を毎日 5 問解く
  5. 戦法と囲いを 1 組決めて、人と指してみる

盤と駒は、まだ買わなくて大丈夫

最初の一歩はスマホのアプリで十分です。選ぶときは、次の 3 つを満たすものを探してください。

  • 無料で始められる
  • 駒に触れると、動ける場所を表示してくれる
  • コンピューター(CPU)の強さを、ごく弱い段階から選べる

たとえば「ぴよ将棋」は無料で入手でき、CPU の強さを 40 段階から選べます。他にも、Web でコンピュータと対局できる「棋譜蔵」など、入門向けのアプリはたくさんあるので、まずは気軽に始めてみましょう。

盤と駒を買うのは、家族や友人と指したくなってからで遅くありません。そのときも、駒に動ける方向の矢印が描かれた入門用のセットを選ぶと、ルールを知らない相手とも一緒に楽しめます。

座卓の上に置かれたスマートフォンと湯呑み、開いたノート

ステップ 1:駒の並べ方と動きを覚える(覚え方のコツ)

並べ方と、先手・後手

駒の並べ方は、アプリの最初の盤面をそのまま真似すれば覚えられます。自分から見て、いちばん手前の列に玉・金・銀・桂・香、その 1 つ前の列の左に角、右に飛車、さらにその前の列に歩を 9 枚並べます。

対局は「先手」と「後手」が 1 手ずつ交互に指します。どちらが先手かは、歩を数枚振って表と裏の数で決める「振り駒」などで決めます(最初はじゃんけんなどで決めてもよいです)。

8 種類の駒の動き

まずは「どの方向に、何マス動けるか」だけを押さえます。表の右の列にある「成る」は、相手の陣地(向こう側の 3 列)に入った駒を裏返して、動き方を変えることです。くわしくはステップ 2 で説明します。

駒(読み方)動き成ると
玉将(ぎょくしょう)・王将(おうしょう)まわり 8 方向に 1 マス成れない
飛車(ひしゃ)縦と横に、どこまでも竜王(りゅうおう。「竜」「龍」とも):飛車の動き+斜めに 1 マス
角行(かくぎょう)斜めに、どこまでも竜馬(りゅうま。「馬」とも):角の動き+縦横に 1 マス
金将(きんしょう)斜め後ろ以外の 6 方向に 1 マス成れない
銀将(ぎんしょう)前の 3 方向と、斜め後ろ 2 方向に 1 マス成銀(なりぎん):金と同じ動き
桂馬(けいま)2 マス前の、1 つ左か 1 つ右のマスへ跳ぶ(行き先は 2 か所だけ。間の駒を飛び越せる。後ろには戻れない)成桂(なりけい):金と同じ動き
香車(きょうしゃ)前に、どこまでも成香(なりきょう):金と同じ動き
歩兵(ふひょう)前に 1 マスと金(ときん):金と同じ動き

覚えるコツは、「成ると金と同じになる駒が 4 つある」とまとめてしまうことです。銀・桂・香・歩は、成るとどれも金の動きになります。

8種類の駒の動き。上段左から玉、飛車、角、金、下段左から銀、桂馬、香車、歩

上の段は左から玉・飛車・角・金、下の段は左から銀・桂馬・香車・歩です。黄色いマスが動かす駒、緑の丸が動けるマス、赤い輪が取れる相手の駒(相手の駒は逆さ向き)、橙の丸が桂馬の跳んで行けるマスです。飛車・角・香車は、自分の駒の手前で止まります。相手の駒なら、取ってそのマスまで進めます。

成り駒の動き。左から竜王(龍)、竜馬(馬)、と金

成り駒は、左から竜王(龍)、竜馬(馬)、と金です。竜王と竜馬は、もとの動きに 1 マスの動きが加わります。右下の「杏」「圭」「全」は、成香・成桂・成銀の駒に書かれている字で、どれもと金と同じく金の動きです。

玉と王は同じ駒で、ふつうは目上の人や強い人が「王将」を使います。

いきなり 9×9 マスの盤が難しく感じるなら、小さな盤のゲームから入る方法もあります。女流棋士の北尾まどかさんが考案した「どうぶつしょうぎ」は、3×4 マスの盤と 8 枚の駒で遊ぶボードゲームです。取った駒を使えるなど、将棋の考え方がそのまま入っていて、親子で遊ぶ入り口にもなります。

日本将棋連盟の入門ページでは、駒の並べ方から反則まで順に解説しています(日本将棋連盟「将棋の基礎知識」)。

ステップ 2:勝ち方と、最低限のルール・反則を知る

王手と詰み

次の手で相手の玉を取れる状態にする手を「王手」といいます。王手をかけられた側は、次の 3 つのどれかで防がなければなりません。

  • 玉を逃がす
  • 王手をしている駒と玉の間に、駒を置いてさえぎる
  • 王手をしている駒を取る

どれをやっても防げない状態が「詰み」で、相手の玉を詰ませたほうが勝ちです。実際に玉を取るまでは指さず、詰んだ時点で勝負がつきます。また、人と指すときは、詰まされる前に負けを認めて「負けました」と言う(投了する)ことでも対局が終わります。

持ち駒と「成る」

ほかのボードゲームと大きく違うのは、取った相手の駒を自分の駒として使えることです。取った駒は「持ち駒」になり、自分の番に、空いているマスへ「打つ」ことができます。成っている駒を取ったときは、裏返して元の駒に戻してから持ち駒にします(と金を取ったら歩)。

「成る」は、駒が相手の陣地(向こう側の 3 列)に入るとき、相手の陣地の中で動くとき、相手の陣地から出るときにできます。相手の陣地は、下の図の緑の 3 列です。

将棋盤の向こう側3列(相手の陣地)を緑でぬった図

覚えておきたい決まりは次のとおりです。

  • 成るかどうかは、ふつうは自分で選べる
  • ただし、成らないとそれ以上動けなくなる場合(いちばん奥の列へ進む歩・香、奥から 2 列目までへ進む桂)は、必ず成る
  • 一度成った駒は、元に戻せない
  • 持ち駒を相手の陣地に打ったときは、その場では成れない。次にその駒を動かすときに成れる

最初に知っておきたい 4 つの反則

反則(禁じ手)は、まず次の 4 つを知っておけば十分です。公式のルールでは、反則をすると負けになります。

  • 二歩
    自分の歩がある縦の列に、持ち駒の歩をもう 1 枚打つ
  • 打ち歩詰め
    持ち駒の歩を打って、相手の玉を詰ませる(盤上の歩を進めて詰ませるのは反則ではない)
  • 王手放置
    王手をかけられているのに、防がずに別の手を指す
  • 行き所のない駒
    それ以上動けなくなる場所に、成らずに進めたり打ったりする(例:いちばん奥の列の歩・香、奥から 2 列目までの桂)

アプリには、反則の手をそもそも指せないようにしているものも多くあります。そのため、盤と駒で人と指したときに、うっかり二歩を打ってしまう人が少なくありません。対面で指すときは、二歩に特に気をつけてください。

ステップ 3:弱いコンピューターや駒落ちで「勝つ経験」をする

ルールを覚えたら、まずは勝てる相手と指しましょう。始めたばかりで負け続けると、将棋そのものが楽しくなくなってしまいます。

おすすめは、将棋アプリの CPU をいちばん弱い設定にして指すことです。それでも勝てないときは、駒落ちを使います。駒落ちは、強い側が最初から駒を何枚か外して指すハンデ戦です。強い側を「上手(うわて)」、すべての駒で指す側を「下手(したて)」と呼び、駒落ちでは上手から指し始めます。アプリによっては、CPU を相手に駒落ちを選べます。

入門向けによく使われるのは「十枚落ち」です。上手は玉と歩 9 枚だけで、飛車・角・金・銀・桂・香はありません。下手は、飛車や角を相手の陣地に入れて成る気持ちよさを味わいながら、玉の追い詰め方を覚えられます。勝てるようになったら、八枚落ち(上手に金が加わる)、六枚落ち(さらに銀が加わる)と、少しずつ上手の駒を増やしていきます。

アプリを入れずにパソコンのブラウザで試したいなら、将棋の研究用 Web サービス棋譜蔵の練習対局でも、強さ「入門」や八枚落ちを選んで指せます。Web で登録するだけで使えて、指した対局を保存しておけば、あとからいつでも開いて形勢を解析しながら振り返れます(すべての機能が無料です)。

勝つためのいちばんのコツ:駒をただで取られない

初心者どうしの対局では、作戦の良し悪しよりも「駒をただで取られたかどうか」で勝ち負けが決まることがよくあります。駒にはおおよその価値の差があります。

  • 飛車・角(大駒)がいちばん価値が高い
  • 次に 金、銀、その次に 桂・香、そして 歩

指す前に、次の 2 つを 1 回だけ確かめる習慣をつけましょう。

  • 動かした先に、相手の駒が利いていない(すぐ取られない)か
  • 今の手で、自分のほかの駒がただで取られる形になっていないか

価値の高い駒と低い駒を交換してしまうこと(駒損)を避けるだけで、勝率はぐっと上がります。

ステップ 4:1 手詰めを毎日 5 問解く

対局と並行して、1 手詰めの問題を解きましょう。「あと 1 手で相手の玉が詰む。その 1 手は?」という短いパズルです。

初心者のうちは、駒の動きを知っていても玉の捕まえ方がわからず、勝てる将棋を逃しがちです。1 手詰めを解くと、「玉の頭(すぐ前のマス)に金を打つ」「逃げ道を先にふさぐ」といった詰ませる形が目に焼きつきます。解くときは、ステップ 2 の「逃げる・間に駒を置く・王手の駒を取る」の 3 つで防げないかを順に確かめると、答えが見つけやすくなります。

  • 1 日 5 問、5 分ほどで十分です。量より、毎日続けることを優先しましょう
  • 1 分考えてわからなければ、答えを見て構いません
  • すらすら解けるようになったら、3 手詰めに進みましょう

詰将棋は多くの将棋アプリに入っているほか、本もたくさん出ています。最初はとびきり簡単なものから選んでください。

ステップ 5:戦法と囲いを 1 組決めて、人と指してみる

戦法と囲いを 1 組だけ決める

人と指し始めると、序盤に何をすればいいのかで迷います。ここで役に立つのが「戦法」と「囲い」です。

  • 戦法
    序盤の攻め方の型。どの駒をどう動かして攻めるかの道筋です
  • 囲い
    玉を金や銀で守る決まった形です。玉を守りの駒の近くに移してから戦うと、攻められても簡単には詰まなくなります

最初は 1 組だけ決めて、毎回同じように指すのがいちばんです。初心者向けには、たとえば次の 2 つがよく勧められます(左右は、自分から見た向きです)。

戦法と囲いどんな指し方か向いている人
棒銀+舟囲い右側の銀を飛車の前の列へ出し、まっすぐ進めて、飛車や歩と一緒に相手の陣地を破る。玉は左へ寄せて、金と銀で簡単に守る自分から攻めたい人
四間飛車+美濃囲い飛車を左から 4 列目へ移し、空いた右側に玉を囲う。相手の攻めを受け止めてから反撃する守りを固めてから戦いたい人

どちらを選んでも構いません。大事なのは、あれこれ手を出さずに 1 つを繰り返すことです。同じ形で何局も指すうちに、「この局面ではこうする」という自分の経験が積み上がっていきます。

ネット対局と将棋教室で、人と指してみる

CPU や駒落ちで勝てるようになったら、人と指してみましょう。

ネット対局なら、自分と同じくらいの強さの相手と、時間を選ばずに指せます。スマホで手軽に始めるなら、将棋ウォーズや将棋クエストなどが代表的です。多くは無料で始められますが、無料で指せる局数などの条件はサービスごとに違い、変わることもあるので、始める前に確かめてください。初めのうちは、持ち時間が長めの対局を選ぶと焦らずに指せます。

対面で教わりたいなら、将棋教室や道場が近道です。日本将棋連盟の道場では、駒の動かし方から教わる初心者向けの講座が開かれており、全国の教室も連盟のサイトから探せます(日本将棋連盟「道場・教室」)。地域の将棋の支部や公民館で、教室を開いていることもあります。

対面で指すときは、始める前に「お願いします」、終わったら「ありがとうございました」とあいさつするのが習慣です。一度指した手を取り消す「待った」はしないのが決まりなので、指す前によく確かめましょう。

障子から光が差し込む和室の座卓と座布団

負けた将棋は「1 分だけ」見返す

人と指すと、負けることのほうが多いはずです。それで当たり前なので、気にしすぎないでください。

ただ、負けた直後に 1 分だけ、「どこで駒をただで取られたか」「詰ませる手を見逃さなかったか」を見返すと、同じ負け方が減っていきます。ネット対局のアプリの多くは、対局の手順の記録(棋譜)を見返せます。慣れてきたら、AI の解析も使った負けた将棋の振り返り方もあわせて読んでみてください。

最初の 1 か月の目安

1 日 15〜30 分ほどを想定した、無理のない進め方の例です。早く進んでも、ゆっくりでも構いません。

時期やること
1 週目駒の並べ方と動きを覚える。いちばん弱い CPU と指してみる
2 週目CPU や駒落ちで勝てるまで指す。1 手詰めを毎日 5 問
3 週目戦法と囲いを 1 組決めて、CPU 相手に毎回同じ形で指す
4 週目ネット対局か将棋教室で、人と 1 局指してみる

よくある質問

大人になってから始めても強くなれますか?

なれます。プロを目指すのでなければ、始める年齢は気にしなくて大丈夫です。仕事や家事の合間に少しずつでも、毎日盤に触れていると駒の動きや詰ませ方を忘れにくく、上達につながります。

お金はかかりますか?

アプリやネット対局、詰将棋は、無料の範囲で十分に始められます。お金がかかるのは、盤と駒や入門書を買うとき、将棋教室に通うとき、アプリで有料の機能を使うときくらいです。

定跡は覚えたほうがいいですか?

最初のうちは、決めた戦法の最初の数手を覚えるくらいで十分です。初心者どうしの対局では、定跡どおりに進むことはあまりありません。それよりも、「駒をただで取られない」「詰みを見逃さない」ことのほうが、勝ち負けに直結します。

子どもと一緒に始めたいのですが、どうすればいいですか?

どうぶつしょうぎのような小さな盤のゲームや、矢印入りの入門用の駒から入ると、子どもも大人も一緒にルールを覚えられます。どちらかが強くなったら、駒落ちでハンデをつけて指すと、勝ったり負けたりを楽しめます。

入門書は買ったほうがいいですか?

アプリだけでも始められますが、1 冊あると、戦法や囲いの形を図で確かめられて便利です。書名に「入門」「はじめての」とあり、図が大きく文字の少ないものなら、最後まで読み通しやすくなります。

まとめ

  • 道具は要らない。まずはスマホのアプリで、駒の並べ方と動きを覚える
  • 勝ち方は「玉を詰ませる」。反則は二歩・打ち歩詰め・王手放置・行き所のない駒の 4 つから
  • 弱い CPU や駒落ちで勝つ経験を積む。駒をただで取られないことがいちばんのコツ
  • 1 手詰めを毎日 5 問
  • 戦法と囲いを 1 組だけ決めて、ネット対局や将棋教室で人と指してみる

今日はまず、アプリを 1 つ入れて、いちばん弱い CPU と 1 局指してみてください。