ゴキゲン中飛車は、後手が角道を開けたまま飛車を5筋に振る振り飛車です。中飛車側がいちばん手を焼く相手が、先手の右の銀が3七から4六へ一気に出てくる「超速☗3七銀」です。

超速への対策のうち、この記事で扱うのは、左の銀を4四に出して先手の銀と向かい合わせる ☖4四銀型(銀対抗) です。先に結論を書くと、覚えることは次の 3 つです。

  1. ☖4二銀・☖5三銀・☖4四銀を早めに。 先手の銀が4六に来たところで、こちらの銀を4四に間に合わせる
  2. ☗3五歩には ☖同歩。 ☗同銀と取り返しに来たら ☖同銀で銀が取れるので、先手は3筋を攻めきれない
  3. ☗3五歩を放っておかない。 玉を囲うのを優先すると ☗3四歩と歩を取って進まれ、3三の角が追われる

この記事では、☖4四銀の形(第1図)までの手順と、先手が急がずに組んできたとき、☗3五歩・☗2四歩・☗5五銀と動いてきたときの受け方を、5 枚の局面図と、1 手ずつ並べられる盤で見ていきます。

ゴキゲン中飛車と超速☗3七銀とは

ゴキゲン中飛車は、☖5四歩・☖5二飛と5筋に飛車を振り、角道を止めずに戦う中飛車です。近藤正和が奨励会のころから指し続けて体系化した作戦で、2001 年度の升田幸三賞を受けています。角道が開いているので、居飛車側が普通に駒組みをすると、中飛車側が ☖5五歩からの捌きや角交換で主導権を握りやすく、2000 年代に大流行しました。

これに対して 2009 年ごろに現れ、一気に広まったのが超速☗3七銀です。先手は ☗6八玉と玉を 1 つ寄っただけで、右の銀を ☗4八銀・☗3七銀・☗4六銀と最短で前に出し、☗3五歩から3筋を攻めます。当時奨励会三段だった星野良生(のちにプロ棋士)がこの指し方を磨き上げ、2010 年度の升田幸三賞を受けました。

超速への後手の対策には、主に次のものがあります。

受け方形特徴
☖4四銀型(銀対抗)左の銀を4四へ先手の4六の銀と向かい合わせ、☗3五歩を受け止める。この記事で扱う形
☖3二金型左の金を3二へ3筋を金で守り、☗3五歩からの攻めに備える
☖4四歩型4筋の歩を突く角道を止めて、角交換をさせずに受ける

どれが一番よいかは、プロの間でも決着がついていません。手元のソフト(やねうら王)でも、第1図は先手の +270 前後と、居飛車側をやや指しやすいと見ます。後手の玉がまだ5一にいて、先手が急がずに玉を固めると、その差が少しずつ出てくるからです。それでも ☖4四銀型は「銀で銀を止める」と考え方が分かりやすく、先手が急いで ☗3五歩と仕掛けてきても慌てずに受けられるので、アマチュアの実戦向きの形です。

第1図(基本図)までの手順

☗7六歩 ☖3四歩 ☗2六歩 ☖5四歩 ☗2五歩 ☖5二飛 ☗4八銀 ☖5五歩 ☗6八玉 ☖3三角 ☗3六歩 ☖4二銀 ☗3七銀 ☖5三銀 ☗4六銀 ☖4四銀(第1図)

後手の銀が4四、先手の銀が4六で向かい合っている。後手の飛車は5二、角は3三、玉は5一のまま。先手の玉は6八。持ち駒はなし
第1図 ☖4四銀まで(基本図)

第1図のねらいは次の 3 つです。

  • 4四の銀で3五の地点に利かせる。 先手の ☗3五歩に、歩でも銀でも取り返せる形にしておく
  • 4六の銀の出口を見張る。 先手の銀が5五や3五に出てきても、4四の銀で取り返せる。超速の「最短で攻める」ねらいが空振りする
  • 玉の囲いは後回し。 玉は5一のままだが、先手の玉も6八でまだ囲えていないので、この段階ではお互いさま。先手の攻めが止まってから ☖6二玉・☖7二玉と囲う

この記事の手順は、下の盤で並べられます。先手が急がずに組む形、☗3五歩・☗2四歩・☗5五銀への受け、☗3五歩を放っておく失敗も入れてあるので、分かれ道で手を切り替えて、形勢の違いを見比べてください。

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超速☗3七銀の対策:☖4四銀型の正しい受け方

先手が急がずに組んできたら、ここで玉を囲う

第1図で、先手がすぐには動かず ☗9六歩・☗5八金と駒組みを進めてきたら、後手もここで玉を囲います。☖9四歩・☖6二玉・☖6四歩・☖7二銀・☖7一玉・☖6三銀と、玉を7一に、右の銀を6三に置く形が一例です。手元のソフトでは、この先も先手の +250 前後で、ほぼ第1図と変わりません。

この形で気をつけたいのは、先手が ☗3八飛と飛車を3筋に回してから ☗3五歩と突いてきたときです。こうなると ☖同歩 ☗同銀 ☖同銀 ☗同飛と飛車で取り返せるので、下で見る「☗同銀なら銀得」は成り立ちません。☗3八飛は、3筋で本格的な戦いが始まる合図です。ここから先は定跡の受け方だけでは足りず、中盤の力比べになります。

☗3五歩には ☖同歩と取る

第1図から、超速のねらいどおりに先手が ☗3五歩と突いてきたら、☖同歩と取ります(第2図)。

3五に後手の歩がいる。後手の銀は4四、先手の銀は4六。後手の持ち駒は歩 1 枚
第2図 ☖同歩まで

ここで先手が3筋を攻め続けるには ☗同銀と取り返したいところですが、それは次の項で見るように銀損になります。先手は ☗7八玉などと駒組みに戻るしかありません。手元のソフトでも第2図はほぼ互角で、第1図の「先手やや指しやすい」から評価が後手に寄りました。先手にとって、☗3五歩を急ぐのは得にならないということです。

☗同銀と取り返してきたら ☖同銀

第2図から ☗同銀と取り返すのは、攻め続けたい先手がつい指したくなる手です。4四の銀が3五に利いているので ☖同銀と取れ、3五には先手の駒がもう利いていないので取り返されません(第3図)。

後手の銀が3五に進み、先手の4六の銀はいない。後手の持ち駒は銀と歩 1 枚、先手の持ち駒は歩 1 枚
第3図 ☖同銀まで(☗同銀と取り返した場合)

歩の交換を差し引くと、後手は銀を 1 枚得しています。手元のソフトでは後手の +1400 前後で、後手がはっきり優勢です。☖4四銀が「3五の地点に利かせる手」だったことが、ここで生きます。

歩を手に入れたら ☖3二飛

第2図のあと、先手が ☗7八玉・☗7七角・☗8八玉と玉を固め、後手も ☖6二玉・☖7二玉・☖8二玉と囲うと、駒組みの勝負になります。後手は歩を 1 枚手に入れ、3五に歩が進んでいます。☖3二飛と飛車を3筋に回して、この歩を支えながら ☖3六歩と伸ばすねらいを見せる手が自然です。先手も ☗3八飛と受けて、ほぼ互角の持久戦になります(盤の 29 手目まで)。

よくある失敗:☗3五歩を放っておいて玉を囲う

第1図から ☗3五歩と突かれたとき、「まず玉を囲ってから」と考えて ☖6二玉と指すのが、☖4四銀型でいちばん多い失敗です。

先手の歩が3四に進み、後手の3三の角に当たっている。後手の玉は6二。先手の持ち駒は歩 1 枚
第4図 ☗3四歩まで(☗3五歩に ☖6二玉と指した場合)

☗3四歩と歩を取って進まれると、3三の角に歩が当たります。4四の銀は横には動けず、角もまっすぐ前には進めないので、この歩は取れません。角を ☖4二角などと引くしかなく、先手は歩を 1 枚得したうえに3四に拠点を作りました。手元のソフトでは先手の +500 前後です。

ほかにも、第1図のあたりでしやすい失敗があります。

失敗の手どうなるか
☗2四歩を放っておく☗2三歩成でと金を作られ、受けが利かない(先手の +2400 前後)
☗5五銀に ☖4五銀とかわす取られた5筋の歩を取り返せず、先手の +400 前後

その後の展開:先手のほかの攻めへの受け方

第1図からの先手の手ごとに、受け方をまとめます。☗3七桂のほかは、盤の 17 手目の分かれ道で並べられます。

先手の手後手の手ひとこと
☗3五歩☖同歩☗同銀なら ☖同銀で銀得(第2図・第3図)
☗2四歩☖同角☖同歩でもよいが、☖同角がやや勝る(第5図)
☗5五銀☖同銀銀と歩の交換で後手が得(後手の +900 前後)
☗9六歩・☗5八金・☗3七桂 など☖6二玉攻めてこないなら、ここで玉を囲い始める

いちばん間違えやすいのは ☗2四歩です(第5図)。

先手の歩が2四に進み、2三の歩と向かい合っている。後手の角は3三、銀は4四。持ち駒はなし
第5図 ☗2四歩まで

3筋ばかり気にしていると、2筋の歩を見落として玉を囲う手を指しがちです。☗2四歩は ☖同角と取ります。ここで ☗同飛と角を取り返されても、☖同歩で飛車が取れるので飛車と角の交換になり、後手がよくなります(後手の +400 前後)。☖同歩と取った場合も、☗同飛には ☖同角で飛車がただで取れるので、先手は ☗同飛とは来られません。手元のソフトでは、☖同角のあとは先手の +80 前後で、第1図より後手に寄ります。

覚え方と練習

☖4四銀型は、手順を丸ごと覚えるより、「先手の手ごとに、次の一手」で覚えるほうが実戦で思い出しやすくなります。

  1. 第1図まで並べる。 ☖4二銀・☖5三銀・☖4四銀と、左の銀を出す順番を手で覚える
  2. 先手の 4 つの手と受けを覚える。 ☗3五歩なら ☖同歩、☗同銀なら ☖同銀、☗2四歩なら ☖同角、☗5五銀なら ☖同銀
  3. 実戦で知らない手を指されたら、その局面を書き足す。 終局後に本やソフトで調べ、分かれ道を 1 つずつ増やしていく。見返すときは、負けた将棋の振り返り方の手順も役に立ちます

書き足した分かれ道は、その局面を見て次の一手を答える形で繰り返すと忘れにくくなります。

実戦で超速☗3七銀になったら、終わったあとに棋譜を見返して、どの分かれ道で外れたかを確かめます。棋譜蔵は Web で登録するだけで使えて、保存した自分の棋譜ファイルをパソコンでもスマホでもいつでも開けます。対局の棋譜を貼り付ければそのまま形勢を解析できるので、どこで形勢を損ねたかを手軽に振り返れます。

よくある質問

ゴキゲン中飛車は超速に不利ですか?

手元のソフトの評価では、超速の形は居飛車側がやや指しやすくなります。ただ、差は小さく、☖4四銀型のように受け方を決めておけば十分に戦えます。先手が ☗3五歩を急ぐと、第2図のように評価はほぼ互角まで戻ります。

☖4四銀型と ☖3二金型、どちらを選べばいいですか?

☖4四銀型は「銀で銀を止める」と考え方がはっきりしていて、先手が急いで仕掛けてきたときに受け方を迷いにくい形です。どちらにも長い研究があり、プロの間でも優劣ははっきりしていません。まずは 1 つに決めて、実戦で出てきた分かれ道を足していくのがおすすめです。

先手が超速ではなく ☗7八玉と囲ってきたら?

超速に来ないなら、☖4四銀を急ぐ必要はありません。☖6二玉・☖7二玉と美濃囲いに組み、☖5六歩や角交換から動くゴキゲン中飛車本来の指し方に戻ります。

先手番で中飛車を指すときも同じ受け方でいいですか?

先手中飛車でも、居飛車側が右の銀を早く繰り出してくる形はあります。ただ、手番が 1 手違うので、この記事の手順はそのままでは使えません。この記事は、後手のゴキゲン中飛車に超速が来たときのものと考えてください。

まとめ

  • 超速☗3七銀には、☖4二銀・☖5三銀・☖4四銀 と左の銀を早めに出して、先手の銀と向かい合わせる
  • ☗3五歩には ☖同歩。☗同銀と取り返してきたら ☖同銀で銀得になる
  • ☗3五歩を放っておいて玉を囲うと、☗3四歩で角が追われる。☗2四歩も放っておかずに ☖同角
  • 先手が攻めてこないなら ☖6二玉から玉を囲う。☗3八飛と飛車が3筋に来たら、3筋の戦いに備える

まずは上の盤で第1図まで並べ、次に後手番で先手が ☗4八銀・☗3六歩と超速の構えを見せたら、☖4二銀と左の銀から動いてみてください。