横歩取りの4五角戦法(☖4五角戦法)は、先手が ☗3四飛と横歩を取った直後に、後手が角を交換して ☖4五角と打つ奇襲です。20 手目で、先手の飛車と、角が成り込む6七の地点を同時にねらわれます。受け方を知らないと、30 手台で将棋が終わってしまうこともあります。

先に結論を書くと、先手が覚えることは次の 3 つです。

  1. ☖4五角には ☗2四飛。飛車を逃げながら、2一の桂に当てる
  2. ☖2三歩と飛車を追われても、飛車を引かずに ☗7七角。☗2六飛と引くのが、ありがちな失敗
  3. ☖8八飛成 ☗同角 ☖2四歩 ☗1一角成まで進めば、馬を作った先手が指しやすい。あとは後手の攻めを落ち着いて受ける

この記事では、☖4五角までの手順、正しい受け方、間違えやすい手、その後の後手の攻めを、5 枚の局面図と、1 手ずつ並べられる盤で見ていきます。

横歩取り4五角戦法とは

横歩取りは、先手が2筋の歩を交換したあと、飛車で3四の歩(横歩)を取る戦型です。歩を 1 枚得するかわりに、飛車が敵陣の近くに出ていくので、後手に攻めるきっかけを与えます。

4五角戦法は、その飛車をすぐにねらう後手の作戦です。同じ横歩取りでも、後手が ☖3三角と上がってじっくり組む形や、後手も ☖7六飛と横歩を取り返す相横歩取りとは別の戦型で、☖8八角成からすぐに角を交換するのが特徴です。

江戸時代から指されていた手順ですが、長く注目されず、アマチュアの沢田多喜男と、若手時代の谷川浩司(現十七世名人)が価値を見直したとされています。谷川は 1978 年の若獅子戦と 1979 年の王位戦でこの戦法を使い、36 手で相手を投了させた将棋もあります。

その後、研究が進んで「先手が正しく受ければ後手の攻めは無理」という結論になり、プロの公式戦ではほとんど指されなくなりました。それでも、持ち時間の短いアマチュアの将棋では今も見かけます。受け方を知っているかどうかで、結果が大きく変わる戦法です。

第1図(基本図)までの手順

☗7六歩 ☖3四歩 ☗2六歩 ☖8四歩 ☗2五歩 ☖8五歩 ☗7八金 ☖3二金 ☗2四歩 ☖同歩 ☗同飛 ☖8六歩 ☗同歩 ☖同飛 ☗3四飛 ☖8八角成 ☗同銀 ☖2八歩 ☗同銀 ☖4五角(第1図)

横歩取りで後手が ☖4五角と打った局面。先手の飛車は3四、後手の飛車は8六にいる。先手は角と歩 4 枚、後手は歩 1 枚を持っている
第1図 ☖4五角まで(基本図)

☖4五角は、次の 2 つを同時にねらっています。

  • 3四の飛車を取る
  • ☖6七角成と馬(成った角)を作る。 ☗同金と取り返すと、8八の銀を横から守っていた7八の金がいなくなります。そこへ ☖8八飛成と銀を取られ、龍(成った飛車)まで作られます

その前の ☖2八歩 ☗同銀も大事な準備です。もし先手の飛車が2八に戻れると、☖6七角成 ☗同金で7八の金がいなくなっても、2八の飛車が横に利いて8八の銀を守れます。2八を銀でふさいで、この受けを消しておくのが ☖2八歩のねらいです。実際、☖2八歩を入れずにいきなり ☖4五角と打つと、☗2四飛 ☖2三歩 ☗2八飛と引かれて、後手の攻めは続きません。

この記事の手順は、下の盤で並べられます。☗2四飛のほかに ☗3六飛・☗3二飛成などの失敗も入れてあるので、分かれ道で手を切り替えて、形勢の違いを見比べてください。

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☖4五角の正しい受け方(対策):☗2四飛から ☗7七角

☗2四飛で桂に当てる

第1図では ☗2四飛と、飛車を2筋に戻します。3四の飛車取りをかわしながら、2一の桂に当てる手です。放っておけば ☗2一飛成と桂を取って龍ができるので、後手は受けなければなりません。

後手は ☖2三歩と打って飛車を追います。ここで飛車を引きたくなりますが、引くと ☖6七角成が来ます(下の「よくある失敗」で説明します)。

☗7七角で8六の飛車と1一の香をねらう

☖2三歩には、飛車を逃げずに ☗7七角と打ちます(第2図)。

先手が ☗2四飛 ☖2三歩のあとに ☗7七角と打った局面。7七の角が8六の飛車と1一の香をねらっている
第2図 ☗7七角まで

☗7七角には、3 つの働きがあります。

  • 8六の飛車に当てる。 後手は飛車を逃げるか、どこかで切るしかない
  • 斜めの先にある1一の香をねらう。 6六から2二まで空いているので、香を取って馬を作れる
  • ☖6七角成を受けている。 ☖6七角成 ☗同金 ☖8八飛成と来ても、☗同角と龍を取れる。馬を作る攻めが成り立たなくなる

2四の飛車は ☖2四歩で取られる形ですが、先に ☖2四歩と飛車を取ってくれば ☗8六角と飛車を取り返せて、先手が大きく優勢です。

第2図からは ☖8八飛成 ☗同角 ☖2四歩 ☗1一角成と進むのが本線です(第3図)。後手は飛車を取られる前に、飛車を8八の銀と刺し違えて、先手の飛車を取り返します。先手は1一の香を取って馬を作ります。

☖8八飛成 ☗同角 ☖2四歩 ☗1一角成と進んだ局面。先手は1一に馬を作り、持ち駒に飛車と香がある。後手の持ち駒は飛車と銀
第3図 ☗1一角成まで

第3図の駒の損得は、後手が銀を、先手が香と歩を得していて、ほぼ互角です。それでも先手が指しやすいのは、1一に馬ができているからです。馬は自陣に引いて守りにも使える強い駒で、後手には同じ働きをする駒がありません。後手は4五の角と持ち駒の飛車・銀で攻めてきますが、それを受けきれば先手が勝ちやすくなります。手元のソフト(やねうら王)で調べても、評価値は先手の +300 前後です。

よくある失敗:飛車を引くと ☖6七角成

ありがちな失敗は、☖2三歩に ☗2六飛と飛車を引く手です。飛車を安全な場所に戻したくなりますが、ここで ☖6七角成と馬を作られます。

☗2四飛 ☖2三歩 ☗2六飛 ☖6七角成 ☗同金 ☖8八飛成(第4図)

先手が ☗2六飛と引いたため、 ☖6七角成 ☗同金 ☖8八飛成と進んだ局面。後手の龍が8八に入っている
第4図 ☖8八飛成まで(☗2六飛と引いた場合)

第2図と違って7七に角がいないので、8八に入った龍を取り返せません。先手陣は龍と持ち駒の攻めを受けきれず、後手が優勢です(評価値は後手の +600 前後)。

第1図で、ほかにも指したくなる手がありますが、どれもうまくいきません。

失敗の手どうなるか
☗3六飛飛車を3筋に引いても、☖6七角成で馬を作られる
☗3二飛成金は取れるが、☖同銀で飛車と金の交換になって駒損
☗8七歩8筋を受けても、☖7六飛と歩を取られて後手が指しやすい

☖4五角の局面では、☖6七角成 ☗同金 ☖8八飛成の筋が成り立たない形にする、と考えると受けの手を選びやすくなります。☗2四飛から ☗7七角が、その答えです。

☗1一角成のあとの後手の攻め

第3図からは、後手が駒を打って攻め、先手が受ける展開になります。主な攻めと受け方は次のとおりです(どれも盤で切り替えて並べられます)。

後手の手先手の手ひとこと
☖8七銀☗7七馬☖7六銀不成と銀を捨ててきたら、☗同馬と取らずに ☗6八馬と引く
☖3三桂☗3六香馬の利きを止めてきた桂を、香でねらう
☖2六飛☗2七歩2筋からの攻めは、歩を打って受ける

中でも注意したいのが、☖8七銀 ☗7七馬 ☖7六銀不成の銀捨てです(第5図)。7六の銀は、7七の馬と6七の歩に当たっています。

☖8七銀 ☗7七馬のあと、後手が ☖7六銀不成と銀を7六に捨てた局面
第5図 ☖7六銀不成まで

ただの銀に見えますが、☗同馬と取ると ☖2六飛と打たれ、2八の銀と7六の馬を同時にねらわれます。せっかくの優勢が互角に戻ってしまうので、☗6八馬と引いて受けを固めます。

どの変化でも、後手は駒を打って攻め続け、先手はそれを受ける形になります。持ち駒が尽きれば後手の攻めは続かないので、あわてて攻め返さず、1 手ずつ受けていけば先手が勝ちやすくなります。

覚え方と練習

4五角戦法と実戦で出会うことは多くありません。ただ、出てきたときに一手間違えると、すぐに終わってしまいます。覚える量は少ないので、次の順で頭に入れておくと安心です。

  1. 第1図の形を覚える。 ☖2八歩 ☗同銀のあとに ☖4五角が来たら、この戦法だと気づけるようにする
  2. ☗2四飛 → ☗7七角 → ☗1一角成の 3 手を組で覚える。 途中で飛車を引かない
  3. 第3図からの後手の 3 つの攻めと、その受けを確かめる。 とくに ☖7六銀不成には ☗6八馬

覚えたら、第1図から自分で次の一手を答える練習を何度か繰り返すと、実戦で迷わず指せるようになります。

実戦で ☖4五角戦法を指されたら、終わったあとに棋譜を見返して、どこで受けを間違えたかを確かめます。棋譜蔵は Web で登録するだけで使えて、保存した自分の棋譜ファイルをパソコンでもスマホでもいつでも開けます。対局の棋譜を貼り付ければそのまま形勢を解析できるので、どこで形勢を損ねたかを手軽に振り返れます。振り返りの手順は負けた将棋の振り返り方にまとめています。

よくある質問

4五角戦法は、先手が有利なのですか?

正しく受ければ先手が有利です。☗2四飛 ☖2三歩 ☗7七角と受けた第2図で、手元のソフトの評価値は先手の +400 前後でした。ただし、第2図までに飛車を引くなど一手間違えると、逆に後手が優勢になります。

4五角戦法を避けたいときは、どうすればいいですか?

15 手目で横歩を取らなければ、この戦法にはなりません。☗3四飛のかわりに ☗2六飛や ☗2八飛と飛車を引けば、横歩取り自体を避けられます。ただ、受け方を覚えておけば先手が有利になる戦法なので、怖がって避ける必要はありません。

☗7七角と、すぐに角を打って受けるのはだめですか?

第1図で ☗2四飛を入れずに ☗7七角と打つ手も、昔から指されている受けです。悪い手ではありませんが、☖8八飛成 ☗同角 ☖3四角と飛車を取られて、形勢はほぼ互角になります。有利を保つなら、☗2四飛 ☖2三歩を入れてから ☗7七角と打つほうが確かです。

後手番でこの戦法を使ってもいいですか?

先手が正しく受けると後手が苦しくなる戦法なので、ふだんの作戦にするのはおすすめしません。相手が受け方を知らなければ短い手数で勝てることもあり、アマチュアの早指しで使う人がいるのはそのためです。指すなら、先手の正しい受けを知ったうえで使うのがよいでしょう。

まとめ

  • 横歩取り4五角戦法は、☗3四飛と横歩を取った直後に、☖8八角成 ☗同銀 ☖2八歩 ☗同銀 ☖4五角と打つ後手の奇襲
  • ねらいは3四の飛車と ☖6七角成。☖2八歩 ☗同銀は、先手の飛車が2八に戻って8八を守れないようにする準備
  • 先手の受けは ☗2四飛 ☖2三歩 ☗7七角。☖8八飛成 ☗同角 ☖2四歩 ☗1一角成で、馬を作った先手が指しやすい
  • ☖2三歩のあとに ☗2六飛と引くと、☖6七角成から ☖8八飛成で後手が優勢になる

まずは上の盤で第1図から ☗2四飛と ☗2六飛を切り替えて、受け方ひとつで形勢がどれだけ変わるかを確かめてみてください。