角換わり早繰り銀は、角を交換したあと、右の銀を ☗3八銀→☗3七銀→☗4六銀と斜め前へ素早く繰り出し、☗3五歩から3筋で攻める戦法です。棒銀より攻め筋が多く、腰掛け銀より覚える手順が少ないので、角換わりで「自分から攻めて勝ちたい」級位者〜初段の人に向いています。

先に結論を書くと、覚えることは次の 3 つです。

  1. 仕掛ける前に ☗6八玉。居玉のまま ☗3五歩と突くと、銀交換のあとに ☖1五角の王手飛車がある
  2. ☗3五歩 ☖同歩 ☗同銀 ☖3四歩には、銀を引かずに ☗2四歩で銀交換。☖3五歩と銀を取られても ☗2三歩成で金と銀の両取りになる
  3. ☖8六歩からの継ぎ歩は取らずに ☗2四歩。☗同歩と取ると、☖同飛の十字飛車で銀か桂を取られる

この記事では、基本図までの組み方、正しい仕掛け、居玉の失敗、後手の別の構えへの注意を、5 枚の局面図と並べられる盤で説明します。

角換わり早繰り銀とは

角換わりは、序盤に先手と後手が角を交換する戦型です。お互いに角を持ち駒にしているので、陣形にすきがあると、すぐに角を打ち込まれます。

早繰り銀は、その角換わりで右の銀を4六まで素早く出し、☗3五歩から攻める作戦です。4六の銀は3筋だけでなく、2筋や5筋にも出ていけるので、相手の受け方に合わせて攻め先を変えられます。

角換わりの右銀の使い方は、主に次の 3 つです。

戦法右銀の進み方特徴
棒銀☗3八→☗2七→☗2六2筋と端を集中して攻める。ねらいがいちばん単純
早繰り銀☗3八→☗3七→☗4六3筋から攻める。攻め筋が多く、相手の形に合わせやすい
腰掛け銀☗4八→☗4七→☗5六中央に構える。プロの対局の主流だが、変化がとても多い

棒銀については角換わり棒銀の定跡で解説しています。棒銀が「2筋と端の一点突破」なら、早繰り銀は「3筋から入って、2筋にも回れる」戦法です。

第1図(基本図)までの手順

☗7六歩 ☖8四歩 ☗2六歩 ☖3二金 ☗7八金 ☖8五歩 ☗7七角 ☖3四歩 ☗8八銀 ☖7七角成 ☗同銀 ☖4二銀 ☗3八銀 ☖7二銀 ☗2五歩 ☖3三銀 ☗3六歩 ☖6四歩 ☗3七銀 ☖6三銀 ☗4六銀(第1図)

角換わり早繰り銀の基本図。先手の右銀が4六に出て、3六の歩と横に並んでいる。先手の玉はまだ5九にいる
第1図 ☗4六銀まで(基本図)

角交換までは棒銀と同じです。違うのは、☗3八銀のあと ☗2七銀ではなく、☗3六歩で銀の通り道を作ってから ☗3七銀→☗4六銀と進むところです。第1図のねらいは次のとおりです。

  • ☗3五歩で3筋の歩をぶつける。 ☖同歩には ☗同銀と、4六の銀で取り返して前に出る
  • 2筋の歩も使う。 2五の歩と3五に出た銀で、2筋にも攻めを広げられる
  • 玉はまだ5九にいる(居玉)。 このまま仕掛けると角の打ち込みが怖いので、先に玉を寄る

手の順番は本や実戦によって前後します。後手の駒組みも ☖6四歩・☖6三銀とは限りませんが、先手は第1図の形を目指せば十分です。

この記事の手順は、下の盤で並べられます。☗6八玉を入れてから仕掛ける本譜のほかに、居玉のまま仕掛ける失敗、☖3五歩と銀を取る手、☖8六歩からの継ぎ歩、☖5四銀・☖4四歩の形も入れてあるので、分かれ道で手を切り替えて形勢の違いを見比べてください。

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角換わり早繰り銀の正しい指し方

☗6八玉を入れてから仕掛ける

第1図から、すぐに ☗3五歩と仕掛けたくなりますが、その前に ☗6八玉と玉を 1 つ寄っておきます。

5九の玉は、2六・3七・4八を通る斜めの筋に乗っています。第1図では銀が4六まで出たので、この筋をふさぐ駒がありません。このまま攻めて飛車が2四に出ると、1五に角を打たれて玉と飛車を同時にねらわれます(よくある失敗で説明します)。☗6八玉は、玉をこの筋から外しておく手です。☗1六歩と端歩を突き、1五に角を打たれても歩で取れるようにしておく形でもかまいません。

☖3四歩には ☗2四歩で銀交換

第1図から ☖7四歩 ☗6八玉 ☖5二金 ☗3五歩 ☖同歩 ☗同銀 ☖3四歩 ☗2四歩 ☖同歩 ☗同銀 ☖同銀 ☗同飛 ☖2三歩 ☗3四飛 ☖3三銀 ☗3八飛(第2図)

銀交換のあと、先手が3四の歩を取り、飛車を3八に引いた局面。後手は3三に銀を打っている。先手の持ち駒は角・銀・歩 3 枚、後手の持ち駒は角
第2図 ☗3八飛まで

☖3四歩で銀を追われたら、銀を引かずに ☗2四歩と2筋の歩もぶつけます。☖同歩に ☗同銀と銀を前に出し、後手が ☖同銀と取れば ☗同飛で、攻めの銀と後手の守りの銀の交換になります。

☖2三歩と飛車先を止められたら、☗3四飛と3四の歩を取ります。これで先手は歩を 1 枚得しました。後手は持ち駒の銀を ☖3三銀と打って飛車を追ってくるので、☗3八飛と引いておきます(第2図)。

第2図は、銀を交換したうえに歩を 1 枚得し、持ち駒の角と銀で次の攻めを組み立てられる形です。手元のソフト(やねうら王)で、先手の +400 前後でした。☖2三歩のところで ☗2八飛と引くのも一局ですが、評価は先手の +180 前後に下がります。歩を取れるときは取っておきましょう。

☖3五歩と銀を取られたら ☗2三歩成

☗2四歩のとき、後手が ☖同歩ではなく ☖3五歩と銀を取ってくることがあります。銀をただで取られたように見えますが、慌てずに ☗2三歩成と、と金を作ります(第3図)。

先手の歩が2三で成り、と金が3二の金と3三の銀に同時に当たっている局面。先手の持ち駒は角と歩 2 枚、後手の持ち駒は角と銀
第3図 ☗2三歩成まで(☖3五歩と銀を取られた場合)

2三のと金は、3二の金と3三の銀の両取りです。どちらかを取れるうえに、2筋も破れています。手元のソフト(やねうら王)で、先手の +1200 前後と、先手が優勢です。☗2四歩に ☖3五歩は、後手にとっては悪い手だと覚えておきましょう。

よくある失敗:居玉のまま仕掛けて ☖1五角

いちばん多い失敗は、☗6八玉を入れずに、居玉のまま仕掛けることです。手順は本譜とほとんど同じに見えます。

第1図から ☖7四歩 ☗3五歩 ☖同歩 ☗同銀 ☖3四歩 ☗2四歩 ☖同歩 ☗同銀 ☖同銀 ☗同飛 ☖1五角(第4図)

後手の角が1五に打たれ、2六・3七・4八を通って5九の玉に、同時に2四の飛車にも当たっている局面。先手の玉は5九から動いていない
第4図 ☖1五角まで(居玉のまま仕掛けた場合)

☖1五角は、5九の玉と2四の飛車を同時にねらう王手飛車です。2六・3七・4八が空いているので、1五の角から5九の玉まで一直線に利いています。玉を逃げると飛車を取られ、先手は大きく駒を損します。手元のソフト(やねうら王)で、後手の +3000 前後と、ほぼ勝負が決まっています。

居玉のときは、☗2四歩 ☖同歩のあとに銀を2四に出た時点で、形勢が大きく後手に傾きます。この先の ☖同銀 ☗同飛で、☖1五角が待っているからです。仕掛ける前の ☗6八玉(または ☗1六歩)の 1 手が、それだけ大事です。

ほかにも、早繰り銀でやりがちな失敗があります。

失敗の手どうなるか
☖8六歩 ☗同歩 ☖8五歩の継ぎ歩を ☗同歩と取る☖同飛で十字飛車。8五の飛車が横の3五の銀と縦の8九の桂を同時にねらい、どちらかを取られる(後手の +700 前後)
☖5四銀・☖4四歩の形に ☗3五歩と突く☖4五歩で銀を追われ、駒の取り合いのあと ☖4六角と打たれて後手が指しやすい(次の章の第5図)

継ぎ歩は、☗3五歩 ☖同歩 ☗同銀のあと、後手が ☖3四歩と打たずに8筋から反撃してくる手です。手拍子で取ると、前に出た3五の銀が横からねらわれます。銀が前に出ているぶん、横の利きに弱いのが早繰り銀の弱点です。

その後の展開

☗3五歩からの仕掛けに対する、後手の主な手と先手の指し方をまとめます(どれも盤で切り替えて並べられます)。

後手の手先手の手ひとこと
☖3四歩(銀を追う)☗2四歩銀交換のあと ☗3四飛と歩を取る(第2図)
☖3五歩(☗2四歩に銀を取る)☗2三歩成金と銀の両取りで先手優勢(第3図)
☖8六歩 ☗同歩 ☖8五歩(継ぎ歩)取らずに ☗2四歩銀交換して ☗2八飛。先手の +200 前後
☖5四銀・☖4四歩(第5図)すぐには ☗3五歩と突かない突くと ☖4五歩から取り合いになり、後手が指しやすい

中でも注意したいのが、後手が6三の銀を5四に出て(腰掛け銀の形)、☖4四歩と突いてくる形です。

第1図から ☖5四銀 ☗6八玉 ☖4四歩(第5図)

後手が5四に銀を出し、4四に歩を突いた局面。次の ☖4五歩で先手の4六の銀がねらわれる。先手の玉は6八に寄っている
第5図 ☖4四歩まで(☖5四銀と構えられた場合)

ここで同じように ☗3五歩と仕掛けると、☖4五歩と4筋で銀を追われます。そこから先はお互いに駒を取り合う展開です。

第5図から ☗3五歩 ☖4五歩 ☗3四歩 ☖4六歩 ☗3三歩成 ☖4七歩成 ☗3二と ☖4六角

お互いに銀を取り合ったうえで先手は金も取り、駒の損得では先手が金 1 枚の得です。それでも、最後の ☖4六角が2八の飛車をにらみ、4七のと金も先手陣に迫っていて、先手は受けに回ります。手元のソフト(やねうら王)で、後手の +250 前後と、後手が指しやすい形です。

この形では、すぐには仕掛けずに玉を固める、別の攻め方に切り替える、といった対応が研究されています。級位者のうちは、☖5四銀・☖4四歩と構えられたら、勢いで ☗3五歩と突かないことだけ覚えておけば大丈夫です。

覚え方と練習

手順を最初から暗記しようとすると、相手が 1 手違うだけで分からなくなります。早繰り銀は、分かれ道とそこで指す 1 手を、次の順で覚えると実戦で迷いません。

  1. 第1図の形と、☗6八玉を入れてから ☗3五歩、の順番を覚える。 仕掛ける前に、玉が5九から動いているかを必ず確かめる
  2. ☗3五歩 ☖同歩 ☗同銀のあとの後手の 3 つの手と、その答えを組で覚える。 ☖3四歩には ☗2四歩、☖3五歩には ☗2三歩成、☖8六歩からの継ぎ歩には取らずに ☗2四歩
  3. ☗3五歩を突く前に、後手の形を見る。 ☖5四銀・☖4四歩と構えられていたら、☗3五歩は急がない

実戦でこの戦型になったら、終わったあとに棋譜を見返して、どの分かれ道で外れたかを確かめます。棋譜蔵は Web で登録するだけで使えて、保存した自分の棋譜ファイルをパソコンでもスマホでもいつでも開けます。対局の棋譜を貼り付ければそのまま形勢を解析できるので、どこで形勢を損ねたかを手軽に振り返れます。振り返りの進め方は、負けた将棋の振り返り方でも紹介しています。

よくある質問

早繰り銀と棒銀は、どちらから覚えるのがいいですか?

ねらいが単純なのは棒銀です。ただ、棒銀は2筋と端に攻めが限られるので、受け方を知っている相手には止められやすい面があります。早繰り銀は3筋・2筋の両方を使えるぶん、相手の形を見て攻め方を選ぶ練習になります。どちらか一方に決める必要はなく、後手が ☖4四歩と突いてこなければ早繰り銀、と使い分けるのもよい方法です。

後手番でも早繰り銀は使えますか?

使えます。後手の場合は左右が反対になり、銀は ☖7二→☖7三→☖6四と進んで、☖7五歩から仕掛けます。考え方は先手と同じで、居玉のまま仕掛けると今度は ☗9五角の王手飛車があるので、先に玉を寄っておきます。手番が 1 手遅いので、相手に先に攻められることもあります。最初は先手番で形を覚えるのがおすすめです。

後手番で早繰り銀を受けるには?

この記事の失敗例が、そのまま後手側の対策になります。先手が居玉なら ☖1五角の筋をねらい(第4図)、玉を寄っていれば ☖8六歩からの継ぎ歩で反撃する。もう1 つは、☖5四銀・☖4四歩と構えて、☗3五歩に ☖4五歩で銀を追う形です(第5図)。

相手も早繰り銀で来たら?

お互いに早繰り銀で攻め合う形は「相早繰り銀」と呼ばれ、どちらが先に攻めるかの勝負になります。基本の考え方(居玉で仕掛けない・継ぎ歩を取らない)はそのまま使えます。

まとめ

  • 角換わり早繰り銀は、右銀を ☗3八→☗3七→☗4六と繰り出し、☗3五歩から3筋で仕掛ける戦法
  • 仕掛ける前に ☗6八玉(または ☗1六歩)。居玉だと ☖1五角の王手飛車がある
  • ☗3五歩 ☖同歩 ☗同銀 ☖3四歩には ☗2四歩から銀交換し、☗3四飛と歩を取る。☖3五歩には ☗2三歩成
  • ☖8六歩からの継ぎ歩は取らない。☖5四銀・☖4四歩型には、勢いで ☗3五歩と突かない

まずは上の盤で第1図から ☗6八玉と ☗3五歩を切り替えて、玉を 1 つ寄るだけで形勢がどれだけ変わるかを確かめてみてください。